石油給湯器の直圧式と貯湯式は「水圧」だけでなく構造が違う
石油給湯器の水道直圧式と貯湯式は、 単に「シャワーが強いか弱いか」の違いではありません。 給湯器の中で水をどう加熱し、どの圧力で配管へ送り出すか が違います。
水道直圧式は、水道から入った水を給湯器内部の熱交換器で必要なときに加熱し、 水道圧を活かして給湯します。 一方の貯湯式は、給湯器内部の缶体に一定量のお湯を蓄え、 缶体を保護するために給水圧を減圧して使用します。
シャワー圧・2階給湯・複数箇所使用を優先するなら水道直圧式が第一候補。 1階中心で使い、初期費用とのバランスを重視する場合は標準圧力型の貯湯式も候補です。 ただし現在は高圧力型貯湯式もあるため、 「直圧か普通の貯湯式か」の二択で考えないことが重要です。
最初に知りたい3種類|直圧式・標準貯湯式・高圧力型貯湯式
石油給湯器を比較するときは、実際には次の3種類に分けて考えると違いが分かりやすくなります。
水道直圧式
水道の圧力をそのまま利用して給湯する方式です。 水道元圧や配管条件が良ければ、強いシャワーや2階給湯で有利です。
標準圧力型の貯湯式
減圧弁で圧力を下げて缶体へ給水します。 長府製作所では標準圧力型を0.1MPa対応として案内しています。
高圧力型の貯湯式
貯湯式の構造を使いながら給湯圧を高めたタイプです。 長府製作所では0.2MPa対応、 コロナでも通常の貯湯式より高い給湯圧で2階給湯に対応する製品があります。
「貯湯式=全部シャワーが弱い」と考えるのは不正確です。 標準圧力型と高圧力型では、使ったときの水圧がかなり違います。
構造の違い|蛇口を開けてからお湯が出るまで何が起きている?
水道直圧式は「流れた水をその場で加熱」
水道直圧式では、蛇口を開けると給湯器内部を水が流れます。 給湯器はその流量を検知してバーナを燃焼させ、 熱交換器を通過する水を設定温度まで加熱します。
そのため、お湯を使っている間は必要な熱量に合わせて燃焼を制御し、 水道側の圧力を利用しながら連続給湯できます。
流量を検知して点火するため、 蛇口を極端に細く絞ると、流量不足でバーナが着火せず水になる場合があります。 夏場のように給水温度が高い時期も、 少流量では火が付いたり消えたりする場合があります。
貯湯式は「缶体のお湯を使い、温度が下がると再加熱」
貯湯式は給湯器内部の缶体にお湯を貯めています。 蛇口を開けると、その缶体に蓄えたお湯を使います。 使用や自然放熱によって缶体内の温度が下がると、 バーナが燃焼して再加熱します。
そのため、お湯を使っていない時間に給湯器が燃焼することがあります。 これは缶体の温度を保つための保温運転で、 貯湯式では正常動作の場合があります。
給湯圧力の違い|0.1MPa・0.2MPa・水道直圧は何が違う?
一番体感しやすい差が給湯圧力です。 ただし「直圧式に替えれば必ず強くなる」わけではなく、元の水道圧が低ければ直圧式でも圧力は上がりません。
水道直圧式
固定の0.1MPa・0.2MPaへ減圧するのではなく、水道元圧を利用します。 実際の蛇口の勢いは、給水元圧、配管長、配管径、ストレーナ、混合栓などの圧力損失で変わります。
標準圧力型
長府製作所では0.1MPa対応。 1階中心の給湯では候補になりますが、 直圧式から交換するとシャワーが弱くなったと感じる場合があります。
高圧力型
長府製作所では0.2MPa対応。 標準圧力型の2倍の圧力区分で、 2階給湯やシャワー圧を重視する場合の中間選択肢になります。
コロナも、水道直圧式から貯湯式へ交換すると、 減圧のためシャワーの勢いが弱く感じる場合があると案内しています。 現在が直圧式なら、価格だけを理由に標準貯湯式へ変更すると使用感が大きく変わる可能性があります。
2階給湯・2階浴そうでは差がさらに大きい
2階シャワー
水は高さが上がるほど圧力を使います。 そのため2階でシャワーを使う場合、 1階と同じ給湯器でも圧力の余裕が小さくなります。
水道直圧式は水道圧を活かせるため2階給湯に向きます。 高圧力型貯湯式にも2階給湯を想定した製品があります。 一方、標準圧力型は設置条件や配管長によってはシャワー圧が不足しやすくなります。
2階浴そうへの追いだき
ここは単純な「給湯圧」だけでは決まりません。 長府製作所では、水道直圧式の強制追いだきタイプについて、 2階浴そうへの追いだきに対応できる構成を案内しています。
一方、減圧式の強制追いだきタイプについては、 2階浴そうへの追いだきはできないと案内されています。 2階に浴室がある住宅では、給湯だけでなく追いだき条件まで確認が必要です。
シャワー温度の違い|「貯湯式のほうが安定」は半分正しい
直圧式は連続使用中の温度を制御しやすい
コロナは水道直圧式について、 連続して同じ温度のお湯を使いやすいことを特徴として案内しています。 現行機種では、流量や必要熱量に応じて燃焼量を制御する機能があり、 通常の使用流量では設定温度を保ちやすくなっています。
直圧式は極端な少流量が苦手
一方で直圧式は流量検知で点火するため、 蛇口を極端に絞ると燃焼停止する場合があります。 特に夏は給水温度が高く、必要な加熱量が小さくなるため、 少流量では火が付いたり消えたりする場合があります。
貯湯式は短時間の温度変化が少ない
缶体の中に加熱済みのお湯を持っているため、 コロナは貯湯式を短時間なら温度変化の少ないシャワーが使える方式として案内しています。
ただし「直圧式は温度が不安定、貯湯式は安定」という単純な比較ではありません。 実際には流量、混合栓、設定温度、機種の温度制御まで含めて差が出ます。
複数箇所の同時使用|「4万キロ」と「直圧」は別の話
ここは混同されやすい部分です。 3万キロ・4万キロは加熱能力、 直圧式・貯湯式は給湯の構造と圧力です。
4万キロの貯湯式だから水道直圧になるわけではありません。 逆に3万キロの直圧式だから、 4万キロ貯湯式より必ず大量のお湯をつくれるわけでもありません。 「圧力」と「加熱能力」は別々に判断します。
浴室と台所を同時に使う場合
同時使用では、 給湯器が1分間にどれだけ水を設定温度まで上げられるかという加熱能力と、 各蛇口まで十分な水を流せる圧力の両方が必要です。
冬は給水温度が低いため、 同じ給湯能力でも夏よりつくれるお湯の量は少なくなります。 「4万キロなら年間いつでも同じ流量」とは考えない方が安全です。
故障の出方も違う|直圧式と貯湯式で見る部品が変わる
直圧式で確認する部品・症状
- 流量センサー・水量検知
- 熱交換器
- 給水口フィルター・ストレーナ
- 燃焼制御
- 過圧逃し弁
直圧式で「蛇口を細くすると水になる」場合は、 必ずしも故障ではなく、点火に必要な流量を下回っている可能性があります。 また交換後に急に流量が落ちた場合は、 給水口フィルターの詰まりなど給湯器周辺も確認します。
貯湯式で確認する部品・症状
- 缶体
- 減圧逆止弁
- 圧力逃し弁
- 温度検知・保温制御
- 給水・出湯側の配管
貯湯式では加熱による水の膨張分を逃がすため、 沸き上げ中に逃し弁ドレンから水が出ること自体は正常な場合があります。 ただし停止中も流れ続ける場合は、 逃し弁への異物、減圧弁・逃し弁の故障などが考えられます。
現在が貯湯式なら方式そのものによる圧力差、 直圧式なら給水口フィルター・配管・混合栓などの影響も確認します。 方式と故障を分けて考えることが重要です。
直圧式と貯湯式で灯油代はどちらが安い?
方式だけでは灯油代を決められません。 現在は水道直圧式にも貯湯式にも高効率のエコフィールがあります。
燃料費に大きく影響するのは、 給湯効率、使用湯量、設定温度、追いだき回数、外気温・給水温などです。 「直圧だから灯油を多く使う」「貯湯だから必ず省エネ」とは言えません。
貯湯式では保温燃焼がある
貯湯式は缶体のお湯が冷えると保温のために燃焼します。 コロナも「お湯を使っていないのに燃焼する」現象について、 缶体内のお湯が設定温度より下がったための保温運転で、 異常ではないと案内しています。
一方、直圧式は基本的に給湯時に水を加熱します。 ただし実際の年間灯油使用量は機種の熱効率と使い方で決まるため、 この動作差だけで年間燃料費の優劣を決めることはできません。
直圧式から貯湯式、貯湯式から直圧式へ交換すると何が変わる?
直圧式 → 標準貯湯式
一番分かりやすい変化はシャワー圧です。 コロナも、直圧式から貯湯式へ交換した場合、 同じ使い方ではシャワーが弱く感じる場合があると案内しています。
現在の水圧に不満がない家庭ほど、価格だけで標準貯湯式へ変更しない方が安全です。
標準貯湯式 → 水道直圧式
シャワー圧や2階給湯を改善できる可能性があります。 ただし元の水道圧が低い住宅では、 直圧式に変えても期待ほど強くならないことがあります。
また、方式変更時は既存配管・混合栓・接続部の状態も確認します。 古い配管だから必ず交換が必要という意味ではありませんが、 給湯器だけでなく配管側を含めた確認が重要です。
標準貯湯式 → 高圧力型貯湯式
貯湯式を維持しながらシャワー圧を改善したい場合の候補です。 コロナの高圧力型には0.2MPa以上の給水元圧を条件とする製品があるため、 現場の給水圧を確認して選びます。
直圧式・貯湯式の詳細比較表
| 比較項目 | 水道直圧式 | 標準貯湯式 | 高圧力型貯湯式 |
|---|---|---|---|
| 給湯の仕組み | 流れる水を熱交換器で加熱 | 缶体に貯めた湯を給湯 | 缶体に貯めた湯を給湯 |
| 給湯圧 | 水道元圧を利用 | 減圧して使用 | 標準型より高圧 |
| 長府の圧力区分 | 水道直圧 | 0.1MPa対応 | 0.2MPa対応 |
| シャワー | 強くしやすい | 弱く感じる場合あり | 標準型より快適 |
| 2階給湯 | 向く | 条件確認が必要 | 対応製品あり |
| 少流量使用 | 極端に絞ると点火しない場合あり | 缶体の湯を使う | 缶体の湯を使う |
| 停止中の燃焼 | 基本的に給湯時 | 保温のため燃焼することあり | 保温のため燃焼することあり |
| 特徴的な部品 | 熱交換器・流量検知 | 缶体・減圧弁・逃し弁 | 缶体・減圧弁・逃し弁 |
| 価格傾向 | 高くなりやすい | 比較的抑えやすい | 標準型より高くなりやすい |
| 向く家庭 | 水圧・2階・同時使用重視 | 1階中心・価格重視 | 貯湯式+水圧も重視 |
石油給湯器の工事費込み料金例
交換費用は本体価格だけでなく、 撤去・据付、配管接続、リモコン、試運転などを含む工事費込みで比較します。 直圧式と貯湯式では本体価格だけでなく、方式変更に伴う配管確認も見積もり差になります。
掲載画像は料金例です。設置条件、機種、在庫、追加工事により実際の総額は変わります。
工事費込み価格に含まれる標準工事
標準工事には、既存機器の撤去、新機器の据付、 給水・給湯・追いだき配管、送油管、リモコンの接続、 試運転、廃材処分を含むのが一般的です。
- 既存石油給湯器の撤去・搬出
- 新しい本体の据付・固定
- 給水・給湯・追いだき配管の接続
- 送油管の接続
- リモコン交換・試運転
- 既存機器の処分
方式変更するときに施工店へ伝えるべき5項目
- 現在の給湯器が直圧式か貯湯式か
- 現在のシャワー圧に満足しているか
- 2階に給湯箇所・浴室があるか
- 浴室と台所を同時に使う頻度
- 冬にシャワー流量が落ちることがあるか
特に「今の水圧を落としたくない」という希望は先に伝えてください。 現在が直圧式なのに、価格だけで標準圧力の貯湯式を選ぶと、 交換後に初めて水圧差に気づくことがあります。
見積もり前に撮影しておきたい場所
本体全体と型番だけではなく、 配管の接続部まで撮影すると直圧式・貯湯式の変更可否を判断しやすくなります。
- 石油給湯器本体の全体
- 型番ラベル
- 給水・給湯配管
- 減圧弁・逃し弁が見える部分
- 灯油タンクと送油管
- 排気口・排気筒
- 2階へ上がる給湯配管が分かる範囲
- 搬入・搬出経路
石油給湯器の直圧式・貯湯式でよくある質問
直圧式と貯湯式で一番大きな違いは何ですか?
給湯する水の圧力と加熱方式です。 直圧式は水道圧を利用し、流れる水を熱交換器で加熱します。 貯湯式は缶体内にお湯を蓄え、缶体保護のため減圧して給湯します。
貯湯式は必ずシャワーが弱いですか?
いいえ。 標準圧力型は直圧式より弱く感じやすいですが、 高圧力型貯湯式もあります。 長府製作所では標準圧力型0.1MPa、高圧力型0.2MPa対応です。
直圧式なら2階でも必ず強いですか?
必ずではありません。 水道元圧、配管径、配管距離、ストレーナ、混合栓などで圧力損失があるため、 元の水道圧が低ければ直圧式でも十分な水圧が出ない場合があります。
直圧式で蛇口を少しだけ開けると水になるのは故障ですか?
必ずしも故障ではありません。 直圧式は流量を検知して点火するため、 流量が少なすぎるとバーナが着火しない場合があります。
貯湯式がお湯を使っていないのに燃焼するのは故障ですか?
缶体内のお湯が設定温度より下がり、 保温のため再加熱している場合は正常です。 貯湯式では使用していない時間にも保温燃焼することがあります。
貯湯式の逃し弁から水が出るのは故障ですか?
沸き上げ時に水が膨張した分を排出している場合は正常です。 ただし停止中も流れ続ける場合は、 逃し弁の異物や減圧弁・逃し弁の不具合を確認します。
直圧式と貯湯式で灯油代は変わりますか?
方式だけでは決まりません。 給湯効率、使用量、設定温度、追いだき、給水温などが影響します。 水道直圧式・貯湯式の両方に高効率機種があります。
直圧式から貯湯式へ交換しても問題ありませんか?
交換自体は検討できますが、 標準貯湯式ではシャワー圧が下がる可能性があります。 現在の水圧に満足している場合は、 直圧式または高圧力型貯湯式を含めて比較する方が判断しやすくなります。
まとめ|方式名より「今の水圧をどうしたいか」で決める
直圧式の最大のメリットは、水道圧を活かした給湯です。 シャワー圧、2階給湯、複数箇所使用を重視する家庭では第一候補になります。
標準貯湯式は減圧して使うため水圧では不利ですが、 初期費用とのバランスを取りやすく、1階中心の使用では十分な場合があります。 また、高圧力型貯湯式なら0.2MPa対応など、 標準貯湯式と直圧式の間を埋める選択肢があります。
現在が直圧式なら交換後に水圧を落としてよいか、 現在が貯湯式なら水圧を改善したいか。 この2点を先に決めると、方式選びを間違えにくくなります。
フォームから石油給湯器交換を相談
型番、現在が直圧式か貯湯式か、 シャワー圧、2階給湯の有無など、分かる範囲でご記入ください。


